公益社団法人日本化学会 : コロイドおよび界面化学部会

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部会長挨拶(2023-2024年度)

酒井 秀樹
2023-2024年度部会長
 東京理科大学 創域理工学部 先端化学科

<ポストコロナ時代の部会の発展に向けて>

2023年3月よりコロイドおよび界面化学部会の部会長を拝命致しました。前任の出口茂先生により刷新、活性化されてきた部会の新しい枠組み、潮流を停滞させることなく運営を行なっていけるかどうか不安の方が大きい状態です。しかし、幸いにも副部会長として、経験豊かな坂貞徳先生(留任)、飯村兼一先生(前討論会委員長)、懸橋理枝先生(現DEIR委員会委員長)が就任され、またこれまで副部会長として活躍された安部 裕先生が事務局長として就任されましたので、連携を深めながら、また部会員の皆様のご意見・ご支援をいただきながら運営してきいきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

本稿では、コロイドおよび界面化学部会について読者の皆様により知っていただければと思い、部会の活動ならびにそれを担当されている各委員会の紹介をさせていただくとともに、ポストコロナ 時代の部会運営のあり方についても述べていきたいと思います。

新型コロナウィルス(Covid-19)の世界的な流行は、我々の生活様式・コミュニケーション方法・仕事の進め方などに大きな影響、そして変革をもたらしました。本部会においても、多くの行事・企画の運営に大きな影響を及ぼし、見直しが求められました。部会の最も重要な行事の1つである「コロイドおよび界面化学討論会」は、2020年(もともとは仙台での開催を予定)、2021年(広島での開催を予定)の両年においてオンラインでの開催を余儀なくされました。Covid-19の流行が始まって半年という状況でオンラインでの開催が可能となったことは驚くべきことであり、当時の討論会委員会(委員長:飯村先生)、現地実行委員会(委員長:蟹江澄志先生)の方々のご尽力に改めて敬意を表します。また、2022年の討論会は、広島大学においてヴィレヌーヴ真澄美実行委員長、飯村討論会委員長を中心とする先生方のご尽力によりハイブリッド開催され、久しぶりに対面で議論を行い、また旧交を温めることができました。今年(2023年)の第74回討論会は、9月12日から14日まで信州大学(長野市)にて酒井俊郎実行委員長、飯山拓討論会委員長のお世話のもと(原則)対面で行われます。また、続けて15日には、国際セッションが善光寺大勧進紫雲閣という魅力的な会場で開催されます。初秋の長野での討論会に是非多くの皆様の参加をお願い致します。

Covid-19の流行が終息に向かいつつある現在でも、なおも企業においてはリモートワークが定着しており、また日々の会議や打ち合わせの多くは尚もオンラインで行われています。すなわち、コロナウィルスの流行を契機に新しいシステムや価値観への切り替えが加速され、「ポストコロナ」時代においてもそれが新しいスタンダードとして定着されていくことになります。本部会においても、出口前部会長が2年前に執筆された巻頭言[1]において既に指摘されているように、withコロナ(これからはポストコロナ)時代のニューノーマルを構築し、運営に活かしていくことが重要となります。

さらに、昨今の人口減と景気低迷とも関連して、国内の各学協会では会員数の減少が問題となっており、結果として学協会運営の見直しが求められています。幸いにも、コロイドおよび界面化学部会は、部会員数約1,000名でほぼ横ばいで推移しており、また財政的にも、比較的堅調な運営がなされてきています。これは、毎年秋に実施される討論会や、部会内の事業企画委員会や企業委員会により実施される各種事業の「コンテンツ」が魅力あるものであるからであり,それにより新しい研究者・技術者に部会員になっていただいてきたからに他なりません。事業企画委員会(実行委員長:蟹江澄志先生)を中心に実施される各種事業、例えばフレッシュマンのために実施される「界面コロイドラーニング」、「キャリ探セッション」や先端的な話題を取り上げる「コロイド・界面技術シンポジウム」などの企画、また、企業委員会(委員長:西川正一郎先生)を中心に企画され、企業の若手研究者の交流を図ることを目的とした「コロイド・界面技術者フォーラム」、また若手WGグループ(委員長:村上良先生)を中心に討論会期間中に企画される「未来のコロイドおよび界面化学を創る若手討論会」などの魅力あるコンテンツが、今後もポストコロナ時代に適した形式で実施されますので是非ご参加ください。

さらに、ポストコロナにおいては、これらの魅力あるコンテンツの発信方法も重要になってきます。対面でのヒトとヒトとの交流を原則としながらも、適宜ハイブリッドやオンラインでのコンテンツ提供も導入しながら、部会員が参加しやすい企画の立案を進められればと思います。広報委員会(委員長:武仲能子先生)を中心に、各種企画の周知や部会のアピールを、部会内外に行っていただけることと思います。

そして、Colloid & Interface Communication (C & I Commun.) 誌は,2023年1号(前号)から、J Stageにおいても掲載されるようになり、電子媒体での提供が開始されました。しばらくは冊子体とのハイブリッド刊行となりますが、電子化に尽力された並河英紀前編集委員長、田中佳祐現編集委員長をはじめとする編集委員会の皆様のご尽力に深謝致します。

昨今、科学技術分野での世界における日本の研究力、発信力の低下がマスコミなどでもしばしば取り上げられています。しかし、多少古い情報とはなりますが、毎日新聞によれば[2]、コロイド・界面(表面)科学は日本が未だ世界の先頭をたって先導している数少ない分野の1つであると位置付けられています。このようなコロイド・界面化学分野における日本のプレゼンスは、出口茂先生が実行委員長を務められた「Okinawa Colloids 2019」においてもアピールされました。世界各国から1,000名余の参加者が万国津梁館に集い、国境の垣根を超えた盛り上がりとなり、5年後の再会を楽しみにされている方も多いとうかがっています。今後も、国際交流委員会(委員長:藤井秀司先生)を中心に、討論会での国際セッションなどを通して継続的に国際交流を推進していだけるものと思います。今後、我が国のコロイド・界面化学の研究分野が引き続き高い国際競争力を保持するとともに、とかく応用指向の高い研究分野とされ、アカデミアでの取り扱いが軽くなりがちな国内でのコロイド・界面化学分野のステータスの向上につながるようにできればと願っております。

本部会の部会員、特に理事の方の女性比率は今なお低く、外国籍の方の理事もほとんどいらっしゃいません。本年度から、出口前部会長のリーダーシップにより、Diversion, Equity, Inclusion and Respect (DEIR)委員会が設立されました。DEIR委員会の取り組みについては、今後懸橋委員長からご紹介があると思います。さらに本部会では、関西支部(吉村倫一支部長)、九州支部(新留康郎支部長)、コロイド・分散凝集分科会(川崎英也主査)などが活発に活動されています。

以上、ポストコロナ時代における部会運営について、各委員会を紹介しながら述べさせていただきました。是非皆様にも部会の活動を知っていただき、今後のコロイド部会のさらなる活性化に向けてご意見・アイデアをいただくとともに、「皆が参加・交流したくなる」部会の雰囲気作りについてご協力を賜れればと考えております。

それでは、コロイドおよび界面化学部会討論会や他の部会行事において多くの皆様にお会いでき、議論できることを楽しみにしております。

[1] 出口茂、With コロナ時代のニューノーマルに向けて, C & I Commun. 46, 2 (2021).
 [2] 毎日新聞、中国の科学論文シェア急上昇 米国と「2強」に 日本は急落、3位が2領域だけ:<https://mainichi.jp/articles/20190505/k00/00m/040/238000c>, 2019年5月6日.

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