公益社団法人日本化学会 : コロイドおよび界面化学部会

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部会長挨拶(2021-2022年度)

出口 茂
2021-2022年度部会長
(国研)海洋研究開発機構・生命理工学センター

<With コロナ時代の部会ニューノーマルに向けて>

このたび 2021-2022 年度の部会長を拝命いたしました海洋研究開発機構の出口です.東京理科大学の酒井秀樹先生,ライオン㈱の安部裕様,日本メナード化粧品㈱の坂貞徳様という部会運営の経験豊かな 3 名の副部会長のお力を目一杯お借りして本部会のために尽力したいと思います.

コロイドおよび界面化学部会は発足から40年以上の長き伝統を有し,現在,会員数1000名ほどで活動しております.コロイド界面化学は一般的には物理化学分野に分類されますが,部会員の専門分野は物理化学だけでなく,高分子,触媒化学,電気化学,化学工学,物理系のソフトマターなど多岐に渡っています.このように当部会は分野横断型の学際領域の研究集団であり,まさに「学問間のインターフェース」を担える組織体です.従いまして,多くの皆さまの研究テーマと当部会との接点があると思いますので,部会への入会をご検討頂けましたら幸いです.

2019 年 11 月に部会の総力をあげて開催した国際会議「Okinawa Colloids 2019」は33 ヵ国から1021 名(うち海外から 248 名)の参加があり,予想を遥かに上回る大盛会となりました.2020年は沖縄での出会いが部会員の皆さんの新たな飛躍に繋がる1年となることを願っていたのですが,誰もが予期しえなかった新型 コロナウイルスの感染拡大によって思い描いていたの とは全く違った1年となってしまいました.新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方々,および,ご家族,関係者の皆様に謹んでお悔やみ申し上げます.

普段の手洗いや消毒,フェイスシールドの曇り止め,mRNAワクチンのキャリアに使われている脂質ナノ粒子など[1],コロイド界面化学も新型コロナウイルスとの戦いに様々な形で貢献しています.しかしながら 変異株の感染が拡大するなど今後の感染状況の推移は まだまだ予断を許しません.今年の1月,新型コロナウイルス研究に携わっている研究者100名を対象にNatureが行なった調査でも,回答者のほぼ 90 %が「コロナウイルスが今後何年にも渡って世界で流行を繰り返す」と考えていることが明らかになっています[2].このような流れの中で部会としても「with コロナ時代」のニューノーマル(新たな日常)を模索する必要があります.

昨年1年間で「イベントのオンライン開催」が様々な学会のニューノーマルとして瞬く間に定着しました.部会でも東北大学での開催を予定していた「第71回コロイドおよび界面化学討論会」をオンライン開催へと切り替えました[3].担当委員の先生方のご尽力によって「最新の研究成果を発表する機会を提供する」という討論会の最重要機能をオンライン開催で果たせるようになったことは部会にとって大変大きな収穫でした.

開催側の負担が小さく参加へのハードルも低い「オンラインイベント」は,単なる「対面イベント」の代替手段ではなく学会イベントの新しいフォーマットだと認識されつつあります[4].新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いて「対面イベント」が再開された後でも,「オンラインイベント」を活用した斬新な企画 を打ち出して行くことが部会ニューノーマルの鍵を握っています.例えば Piero Baglioni 教授(University of Florence,2017 年度 Lectureship award 受賞者)を招いて討論会の中で開催したイブニングセミナーは,オンライン開催だからこそ実現できた企画でした.

「Okinawa Colloids 2019」のように「開催地の魅力」という必殺カードが使えないオンラインイベントの成功はひとえに「企画」にかかっています.多くの人を惹きつける魅力的な企画を立案するには,年齢,ジェンダー,研究分野などの部会の「多様性」の確保がこれまで以上に重要になってきます.そこで With コロナ時代の部会をより活気に溢れた魅力ある組織とするため,新執行部発足のタイミングで若手や異分野の大勢の先生方に部会委員に就任していただきました.これからの 2 年間,部会員の皆さんとともに色々なアイデアに果敢に挑戦し,成功や失敗を繰り返しながら部会ニューノーマルを模索していきたいと思います.どうぞよろしくお願いします.

1. Let’s talk about lipid nanoparticles. Nat. Rev. Mater. 6, 99 (2021)<https://doi.org/10.1038/s41578-021-00281-4>.
2. Phillips, N. The coronavirus is here to stay – here’s what that means. Nature 590, 382-384 (2021)<https://doi. org/10.1038/d41586-021-00396-2>.
3. コロナ禍を受けての部会活動:現状報告と今後の展望. C & I Commun. 45, 2-16 (2020).
4. Scientists want virtual meetings to stay after the COVID pandemic <https://doi.org/10.1038/d41586-021-00513-1>.

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