公益社団法人日本化学会 : コロイドおよび界面化学部会

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令和6年度 科学奨励賞および技術奨励賞受賞者の決定 2024.05.19

日本化学会コロイドおよび界面化学部会の令和6年度部会奨励賞(科学奨励賞、技術奨励賞)の選考委員会が、令和6年2月8日に開催され、推薦された候補者について賞選考委員会において慎重に審査を行った結果、下記の方々が選出されました。また2月9日に行われた部会役員会において、受賞者として承認されましたので、ここに報告させていただきます。

令和6年度 科学奨励賞受賞者

安原主馬先生(奈良先端科学技術大学院大学)
赤松允顕先生(鳥取大学) 

令和6年度 技術奨励賞受賞者

振角一平氏(花王株式会社)

選考理由

安原主馬先生は、奈良先端科学技術大学院大学で博士の学位を短期修了で取得された後、翌年の2009年1月から同大学に助教として着任し、2018年に准教授に昇任され現在に至っております。また、米 ・ミシガン大学およびカリフォルニア大学サンフランシスコ校において、それぞれVisiting scholarおよび Visiting assistant professorとして計 2年 3ヶ月にわたり研究を行われたご経験があります。
安原先生は、高度な細胞機能のプラットフォームである脂質膜における天然の機能性両親媒性分子の挙動をコロイド界面化学の観点から理解し、その知見を人工の両親媒性高分子のデザインへと還元することで、膜に作用して働く生体機能性バイオミメティック高分子を創出する研究を展開されてきました。一連の研究における主たる成果として、細胞膜に作用する生理活性高分子のデザインと作用機構の解明、最小の細胞膜としての脂質ナノディスク技術の開発、有機-無機ハイブリッド構造を有する脂質分子集合体の形成技術の開発などが挙げられますが、それらを含めた優れた研究成果は、数多くの欧文誌原著論文をはじめ、総説・解説、著書、特許などで発表されています。また、国内外から高い評価を受け、数多くの受賞歴や招待講演のご経験があります。更には、当部会のコロイドおよび界面化学討論会や国際会議にも積極的に参加・発表されております。
以上のように、安原先生の新規的でオリジナリティーにあふれた研究内容と優れた業績は卓越したものであり、科学奨励賞の受賞にふさわしいと判断されました。

赤松允顕先生は、東京理科大学で博士の学位を取得された後、同大学やスイス・ジュネーブ大学の研究員、東京理科大学の嘱託助教、嘱託特別講師を経た後、2022年12月に鳥取大学の講師として着任され、現在に至っております。
赤松先生は、界面で形成される超分子会合体や集合体を駆使した高次分子機能の発現と応用に関する研究に精力的に取り組んでこられました。特に、界面という特異な反応場における分子間相互作用を利用した新しい超分子機能の創出に関して、水/固体界面におけるアニオン–π相互作用の発現と界面機能の制御法の構築や、気/水界面の単分子膜を用いた可逆的なアニオン捕捉の制御、水中での高速光応答性分子集合体の構築など、独自の着眼的やアイデアに立脚した研究を展開されております。それらの成果については、多くの優れた欧文誌に原著論文として発表されており、総説・解説としてもまとめられています。また、研究に対する周囲からの注目度は非常に高く、これまでに数多くの賞を受賞し、招待講演をなされてきました。また、当部会のコロイドおよび界面化学討論会や国際会議にも積極的に参加・発表されております。
以上のように、赤松先生の独創的な研究内容と優れた業績は卓越したものであり、科学奨励賞の受賞にふさわしいと判断されました。

振角一平氏は、2007年に花王株式会社に入社されて以来、研究開発部門・解析科学研究所に所属され、界面科学分野における解析技術開発や物性制御に関する研究に従事されてきました。特に、バイオフィルムの形成制御に関連した研究で優れた成果を挙げておられており、コンディショニングフィルムの形成過程に対するタンパク質吸着による影響の解明や生成抑制技術の開発、バイオフィルムの形成過程追跡のための水晶発振子マイクロバランス法を用いた粒子吸着のin situ解析技術の開発、界面活性剤を用いた殺菌能の評価と作用機序の解明などの研究を展開されています。また、それらの研究成果については、欧文誌原著論文として発表されているとともに、特許としても公開されています。また、原著論文のいくつかについては、海外の研究者との共著の形で発表されており、国際的な産学連携研究が展開されていることがうかがえます。また、当部会のコロイドおよび界面化学討論会や国際会議にも継続的に参加・発表されております。
以上のように、振角氏は、学術研究と企業での応用展開を橋渡しする優れた研究を積み重ねられており、その業績は卓越したものであることから、技術奨励賞受賞者としてふさわしいと判断されました。

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