令和5年度 Lectureship Award 受賞者について 2024.05.19
日本化学会コロイドおよび界面化学部会の令和5年度Lectureship Awardの選考委員会が、令和5年2月8日に開催され、推薦された候補者について賞選考委員会において慎重に審査を行った結果、下記の方々が選出されました。また令和5年2月16日に行われた部会役員会において、受賞者として承認されました。
第22回 Lectureship Award 受賞者
- Erica Wanless先生(University of Newcastle, Australia)
- Tommy Nylander先生(Lund University, Sweden)
選考理由
LAは、「当該分野で著しい活躍をされておられる、あるいは将来この分野での活躍が期待できる著名な研究者」に対する国際賞です。
Erica Wanless先生は、オーストラリア国立大学でPh.D.を取得され、ニュージーランドで博士研究員をされた後、1996年から現職のUniversity of Newcastleで研究を展開されています。
Wanless先生は、界面物理化学を学術基盤として研究を推進され、多くの優れた業績をあげられています。特に、固液界面への界面活性剤の吸着に関して先駆的な業績をあげられており、固液界面に吸着した界面活性剤層に線状のナノ構造が存在することを初めて証明し、それまで長く受け入れられていた単純な単層-二層吸着モデルが誤っていることを示されています。一方、固液界面に吸着した高分子ブロック共重合体を対象に、液相の物理・化学的特性と高分子構造の相関関係を解明し、高分子科学においても重要な貢献を果たしています。
上記の顕著な研究業績に加え、同教授は現在Australasian Colloid and Interface Society の会長を務めるなど、学会活動を通じた界面化学の発展にも力を注いでいます。また、国際交流も精力的に実施しており、特に本部会の主要交流行事であるAJシンポジウムには毎回参加し運営に関わられています。以上、Wanlessl先生は、極めて質の高い研究成果を挙げておられ、本部会のLectureship Award を受賞するにふさわしいと判断されました。
Tommy Nylander先生は、スウェーデンのLund 大学にて1987 年にPh. D. を取得されました。オーストラリア国立大で博士研究員を勤められた後、2007年にLund University に教授として迎えられました。
Nylander教授は、界面活性分子の界面挙動と溶液挙動を関連付けることを主眼とした卓越した研究を展開されてきています。タンパク質や脂質などの生物由来分子と、それらがバルクや界面で形成する自己組織化構造に焦点を当て、エリプソメトリー、水晶振動子マイクバランス法(QCM-D)、中性子反射率測定といった先端界面計測を駆使して新規知見を見出されています。それらの成果はこれまでに280報を超える論文や書籍を公表されています。
また、中性子散乱の分野で先導的な役割をされてきており、複数のビームタイムアクセスパネルで評価者を務めていいます。また、Lund Advanced Institute of Neutron and X-ray Science(LINXS)のフェローとしても活躍されています。さらに、2022 年からは、European Colloid and Interface Society の会長になられています。
以上のように、Nylander教授の顕著な活躍はLectureship Award を受賞するにふさわしいと判断されました。