公益社団法人日本化学会 : コロイドおよび界面化学部会

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令和4年度 科学奨励賞および技術奨励賞受賞者の決定 2022.11.25

日本化学会コロイドおよび界面化学部会の令和4年度部会奨励賞(科学奨励賞,技術奨励賞)の選考委員会が,令和4年2月1日に開催され,推薦された候補者について賞選考委員会において慎重に審査を行った結果,下記の方々が出席委員全員の合意で選出されました。また2月1日に行われた部会役員会において,受賞者として承認されましたのでここに報告させていただきます。

令和4年度 科学奨励賞受賞者

Mai Thanh Nguyen(マイ タン グエン)先生(北海道大学)
久保史織先生(産総研) 

令和4年度 技術奨励賞受賞者

齋藤隆儀氏(花王)
森垣篤典氏(ライオン)

選考理由

Mai Thanh Nguyen先生は、「Mai Thanh Nguyen 先生は、北陸先端科学技術大学院大学で博士の学位を取得された後、同学での博士研究員を経て、北海道大学大学院工学系研究院の特任助教として着任されました。
Nguyen 先生は、これまで一貫してナノ粒子およびその分散系の研究に従事されてきました。例えば、熱電材料として用いられる合金ナノ粒子のスパッタリング法による合成を行い、化学還元法とは異なる構造、つまり固溶体構造を持つ粒子を得るとともに、その光物性について解明されました。また、ナノ粒子触媒、特に二次電池触媒の合成および応用についても顕著な成果を発信されています。さらに、これらの研究成果を、コロイドおよび界面化学討論会やその他の国際会議などで積極的に発表されています。
以上、Nguyen 先生は、極めて質の高い研究成果を挙げておられ、本部会の科学奨励賞を受賞するにふさわしいと判断されました。

久保史織先生は、早稲田大学大学院で修士号取得後に産業技術総合研究所に入所され、水溶液中でのコロイド形成を利用したシリカ系メソ多孔性材料の合成および応用に関する研究で顕著な成果をあげられました。また、2008年より3年間は、マックスプランク研究所コロイド・界面部門において在外研究を行い、糖原料から 水熱プロセスを利用した新しい手法での多孔質カーボン合成を達成されるとともに、ドイツでPh.D.を取得されています。帰国後には、水熱合成の可能性をさらに深く追求し、複数のコロイド粒子を同時に用いて新規な階層型のカーボンナノ構造を達成し、さらには得られた多孔質カーボン材料が触媒担体として優れた機能を発揮することを見出すなど、精力的に研究を展開されています。
以上、久保先生は、独創性の高い研究成果を挙げていることから、本部会の科学奨励賞を受賞するにふさわしいと判断されました。

齋藤隆儀氏は2009年に花王株式会社に入社された後、へアコンディショナーを形成するαゲルの基礎研究、ならびに製品開発に貢献する機能性素材開発に従事されてきました。特に、世界でも珍しいサステナブルなカチオン界面活性剤を用いたヘアコンディショナーの開発に携わり、さらにこの界面活性剤が形成するαゲルの構造/機能相関を明らかにする研究成果を発表されています。
また、衣料用液体洗剤用の機能性基剤の開発に関して、衣類上に機能性素材を吸着し、繊維への汚れの付着やしみ込みを防ぎ、汚れ落ちも良くするSoil-Release剤(SR剤)の研究開発に取り組まれました。その結果、汚れを除去する洗濯作業と同時に繊維に吸着して効果を発現できる基剤開発に成功されています。
以上のように、齋藤隆儀氏の業績・活躍は卓越したものであり、技術奨励賞を受賞者としてふさわしいと判断されました。

森垣篤典氏は、2008年にライオン株式会社に入社された後、一貫して地球環境への負荷の軽減という視点に立ち、界面活性剤の原料として生産効率が高く、再生可能なパーム油を原料とするMES(アルファスルホ脂肪酸エステル塩)に注目した研究を進められてきました。MESは従来から家庭用粉末洗剤に使われて来ましたが、衣料用洗剤の主形態が液体洗剤へと移り変わるのに伴い、MESも液体洗剤への活用が望まれていました。一方、MES のアルキル鎖長は長くクラフト点が高いため、液体洗剤中で低温析出することが問題とされてきました。そこで、森垣氏は正に帯電した水溶性添加剤と複合化させることによりクラフト点を低下させ、MES の液体洗剤への配合を実現しています。一方、添加剤のミセルへの分配率やその際のミセルの溶存状態を明らかにし、基礎科学的にも有益な知見を明らかにしています。
以上のように、森垣篤典氏の業績・活躍は卓越したものであり、技術奨励賞を受賞者としてふさわしいと判断されました。

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