令和3年度 Lectureship Award受賞者の決定 2021.08.27
日本化学会コロイドおよび界面化学部会の令和3年度Lectureship Awardの選考委員会が,令和3年1月28日に開催され,推薦された候補者について賞選考委員会において慎重に審査を行った結果,下記の方々が出席委員全員の合意で選出されました。また2月1日に行われた部会役員会において,受賞者として承認されましたのでここに報告させていただきます。
第21回 Lectureship Award 受賞者
- Jérôme F.L. Duval 先生(CNRS, France)
- Frank Caruso 先生(The University of Melbourne, Australia)
選考理由
LAは、「当該分野で著しい活躍をされておられる、あるいは将来この分野での活躍が期待できる著名な研究者」に対する国際賞です。
Jérôme F.L. Duval先生は、2003年にUniversity of Wageningenにおいて、DLVO理論の枠組にタンパクの吸着等による表面粗さの幾何学的要素や分極効果を組み込んだ解析を行い、学位を取得されました。その後も不均一な界面の問題に理論と実験に両面から取り組み、卓越した成果を挙げられています。
その後、フランスのCNRSの研究者としてナンシーLorraine大学に職を得られ、2013年には36歳の若さでCNRS Research Directorに就任されています。最近の研究成果としては、AFMによる微細測定を活用した細胞レベルでのバクテリアの付着力測定、腐植物質のイオン吸着の理論解析等が挙げられます。
また、Duval先生は、ELKIN(界面動電現象に関する国際シンポジウム)やIAP(環境汚染に関する界面科学の取組に関する国際会議)の議長も務められており、また日本との国際共同研究の実績も多数お持ちです。以上、Duval先生は、極めて質の高い研究成果を挙げておられ、本部会のLectureship Awardを受賞するにふさわしいと判断されました。
Frank Caruso先生は、1994年にメルボルン大学で博士号を取得された後、1997年からはドイツ マックスプランク コロイド・界面研究所でグループリーダーを務められ、2003 年からは現職のメルボルン大学の教授として精力的に研究を展開されています。Caruso教授の研究対象は多岐にわたり、特に自己組織化技術を活用して、コロイド粒子の表面をナノレベルで機能化する手法の開発を行い、この手法で得られる材料をドラッグデリバリーやバイオセンサーなどへ応用展開する研究は世界的に広く知られています。また、表面化学の分野では、高耐久性の超撥液コーティング法の開発等で顕著な成果をあげられています。
Caruso 教授の研究成果は、500報を超える論文によって世界に発信されており、その総引用回数は50,000回を超え、H-Indexは116となっています。英国Royal SocietyからLeverhulme Medalを授与(2019年)された他、ACS Nano Lectureship Award(2012 年)等、国際的な賞も受賞されています。
また、Caruso先生は、日本のコロイドおよび界面化学分野の研究者を博士研究員等として多く研究室に受け入れられています。以上のように、Frank Caruso博士の顕著な活躍はLectureship Award を受賞するにふさわしいと判断されました。