公益社団法人日本化学会 : コロイドおよび界面化学部会

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令和2年度Lectureship Award受賞者の決定 2020.06.17

日本化学会コロイドおよび界面化学部会の令和2年度Lectureship Awardの選考委員会が,令和2年1月22日に化学会館にて開催され,推薦された候補者について賞選考委員会において慎重に審査を行った結果,下記の方々が出席委員全員の合意で選出されました。また同日行われた部会役員会において,受賞者として承認されましたのでここに報告させていただきます。

第20回 Lectureship Award 受賞者

  • Nicolei Denkov 先生(University of Sofia, Bulgaria)
  • Vincent S. J. Craig 先生(The Australian National University, Australia)

選考理由

LAは、「当該分野で著しい活躍をされておられる、あるいは将来この分野での活躍が期待できる著名な研究者」に対する国際賞です。

Nikolai D. Denkov教授は、1993年にブルガリア・ソフィア大学にて博士号を取得後、日本においてERATO「永山たん白集積プロジェクト」に参加されました。その後ソフィア大学に戻られて研究に従事され、2008年より現職・ソフィア大学の教授として精力的に活躍されています。界面活性剤の溶液物性、エマルションの設計とレオロジー研究、泡の制御、薄膜の表面力などコロイドおよび界面化学の王道とも呼べる分野で多くの先駆的な研究成果を残されています。界面活性剤水溶液に関する研究においては、気液および油水界面への界面活性剤の吸着や単分子膜の相転移現象と泡や乳化のダイナミクスを明確にし、実際に泡や乳化系の特性を制御する条件、そして用いる界面活性剤の種類や組み合わせに関して体系的な説明に成功しています。精緻な実験結果と現象の物理的解釈を組みあわせる研究スタイルは、きわめて説得性のある165報の論文に結集されており、また、総引用数は8000を超えています。このように、Denkov教授は、極めて質の高い研究成果を挙げておられ,本部会のLectureship Awardを受賞するにふさわしいと判断されました。

Vincent S. J. Craig教授は、オーストラリアのThe Australian National University にて博士号を取得され、その後アメリカ・オーストラリアで博士研究員を務められたあと、現在 The Australian National Universityの教授してコロイド物理化学の広範囲な分野において研究を実施され、数多く優れた業績を残しています。特に顕著な業績を上げている研究について以下に記載します。
1) AFMによる固体表面間力の評価:コロイドプローブ法を駆使し、疎水性引力、界面活性剤・高分子吸着の影響、表面粗さの影響など、幅広いトピックに対して重要な貢献を果たしています。特に、世界で初めて疎水面での液体のすべりを定量的に測定することに成功しています。
2) バルク液体および固液界面における気泡の研究:液体中の気泡の合一におけるイオン種の影響を初めて明らかにし、気泡の合一というシンプルかつ重要な問題を物理化学的に解析する研究を切り開きました。
3) 溶液の物性に対するイオン種の影響:イオン種の影響に関するHofmeister順列が、水だけでなく非水溶媒にも存在することを発見しました。
上記の顕著な研究業績は、130報以上の原著論文にまとめられており、対する総引用数は7000以上にのぼっています。さらに、同教授は国際的な研究交流に対しても精力的に活動しており、2015年にはThe Western Pacific Colloids Meeting 2015 を主催し成功に導いています。以上のように、Vincent Craig 教授の著しい活躍は Lectureship Award を受賞するにふさわしいと判断されました。

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