公益社団法人日本化学会 : コロイドおよび界面化学部会

  1. English
  2. 入会案内

平成30年度科学奨励賞および技術奨励賞受賞者の決定 2018.06.12

平成30年1月26日(金)に化学会館にて行われた賞選考委員会を経て、同日行われた部会役員会にて、下記の方々が平成30年度科学奨励賞および技術奨励賞の受賞者として承認されましたので、ご報告致します。

平成30年度 科学奨励賞受賞者

鈴木大介 氏 信州大学
「ソフト微粒子の次元構造とマイクロ空間場における機能制御」
近藤篤 氏 東京農工大学
「有機−無機ナノ細孔性材料の開発と吸着に関する研究」

平成30年度 技術奨励賞受賞者

加賀谷真理子 氏 花王株式会社
「弱酸性塩型界面活性剤を用いた皮膚へのマイルド性と高洗浄性の両立実現」

選考理由

鈴木氏は、外部刺激に応答するハイドロゲル微粒子の新規合成法から、それらの配列・集積化技術の開拓、自律駆動機能を有する新規ゲル微粒子の開発に至るまで、ソフト微粒子分野の発展に大いに寄与されています。例えば、様々な形態のゲル微粒子や粒子内に階層構造を有する複合微粒子の合成、ロタキサン構造で架橋された柔らかさと強靱性を兼ね備えたゲル微粒子の開発に成功されています。さらに、高速AFMの液中観察から微粒子の柔らかさと基板への吸着速度の関係の解明に成功し、高分子微粒子の評価に高速AFMが有効であることを実証されています。このように、ソフト微粒子の空間的な構造制御と動的な構造制御という新しい科学分野を開拓されていることから科学奨励賞に相応しいと評価されました。

近藤氏は、柔軟で構造変化する細孔性材料の吸着科学の発展に大いに寄与されています。具体的には、IUPACの8つの吸着等温線のどれにも属さない特殊なガス吸着特性を示す新規な層状のMetal-organic framework (MOF)を創製され、MOFの層間が30%も拡張して特定の分子を選択的に包摂することを世界に先駆けて実証されました。さらに、様々な柔軟性結晶の合成を手掛けられ、層状化合物の陰イオンなどの構成要素を置換することでガス吸着特性が劇的に変わる材料や層状構造体以外でも柔軟性に起因する特異なガス/蒸気選択的吸着特性を示す材料の開発にも成功されています。このように、従来の吸着とは異なる柔軟な結晶への吸着という新しい科学分野を開拓されていることから科学奨励賞に相応しいと評価されました。

加賀谷氏は、皮膚刺激の低いアニオン界面活性剤であるアルキルエーテルカルボン酸塩が皮脂汚れに対して特異的な相互作用をすることに着目して、ゴシゴシ擦らなくとも自発的に皮脂汚れを水に溶解・分散できる洗浄システムを開発されました。本洗浄システムの特徴は、皮脂汚れ成分である長鎖脂肪酸を洗浄剤に変えるという新規なアイデアを導入することにより、「界面活性剤の使用量の低減」と「肌ではなく皮脂汚れへの直接的な作用」とを図ったことです。このように、皮膚にマイルドで高洗浄力な製品の開発に成功されたことから、技術奨励賞に相応しいと評価されました。

先頭に戻る