公益社団法人日本化学会 : コロイドおよび界面化学部会

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コロイド先端技術講座2023 柔らかい多孔性材料 –その構造と機能をさぐる– 2023.12.14

主催:日本化学会 コロイドおよび界面化学部会
協賛・後援:イオン交換学会、化学工学会、高分子学会、材料技術研究協会、錯体化学会、色材協会、触媒学会、日本液晶学会、日本化粧品技術者会、日本吸着学会、日本香粧品学会、日本生物工学会、日本生物物理学会、日本熱測定学会、日本農芸化学会、日本膜学会、日本薬学会、日本薬剤学会、日本バイオマテリアル学会、日本物理学会、日本レオロジー学会、表面技術協会、粉体工学会
日時:2024年3月14日(木)9:35〜17:25
会場:日本大学理工学部駿河台校舎タワー・スコラ(東京都千代田区駿河台3丁目)
   
開催概要:従来、多孔体は「固い」材料として取り扱われてきましたが、近年、構造に柔軟性を持つ多孔性材料が大きな注目を集めています。この柔らかい多孔性材料の代表例はMetal-Organic Framework (MOF)ですが、他にも「柔らかさ」が新しい機能を生み出す重要な働きをしている材料が次々と見出されてきています。このような材料は、その柔らかさに由来する高い分子選択性、除熱特性、生体適合性などの特異な機能から、革新的な分離プロセスや医療技術、蓄電・発電デバイスの実現に向けた重要なキーマテリアルとして大きく期待されています。
本企画では、柔らかい多孔性材料の開発を牽引されている著名な先生方に、「柔らかさ」をキーワードとした多孔性材料の設計、解析、応用までを含めた幅広い視点でのご講演をお願いしました。これを通じて、各々の材料における発現機能の共通点・相違点を深く考察し、今後の開発や応用への展望を議論できる機会を提供いたします。


プログラム
9:35 – 9:40 趣旨説明 渡邉 哲(京都大学 大学院工学研究科)

9:40 – 10:50 【基調講演】「Soft Porous Crystal (SPC)の化学と応用」
北川 進 先生(京都大学 物質-細胞統合システム拠点)

10:55- 12:05 【基調講演】「自己組織化の科学:ナノ構造をつくる・ナノ空間をつくる」
藤田 誠 先生(東京大学 大学院工学系研究科)

13:05 – 13:55 「精密ゲル科学と基礎に立脚したゲルの医療応用」
酒井 崇匡 先生(東京大学 大学院工学系研究科)

13:55 – 14:45 「グラフェンで作る柔軟なナノポーラス材料」
西原 洋知 先生(東北大学 材料科学高等研究所)

14:45- 15:35 「気水界面を利用した多孔性分子ナノシート結晶の創製」
牧浦 理恵 先生(大阪公立大学 大学院工学研究科)

15:45 – 16:35 「劇的に形を変える多孔性結晶」
佐藤 弘志 先生(理化学研究所 創発物性科学研究センター)

16:35- 17:25 「弾性不均一に起因する分子吸脱着の不均一性と非対称性」
高江 恭平 先生(東京大学 生産技術研究所) 

参加費:部会員10,000円 日化・協賛・後援学会員15,000円 非会員20,000円 学生(部会員)3,000円 学生(非会員)5,000円
※参加費は全て税込価格となります。
※ご勤務先が法人部会員の場合は部会員、日本化学会法人会員の場合は日本化学会員、協賛学会法人会員の場合は協賛学会員扱いとなります。

申込方法
以下よりお申し込みください。
https://colloid.csj.jp/form/view.php?id=35533

締切:申込は当日まで受け付けますが、対面の申込受付はしませんので、当日でも上記URLよりお申し込みください。当日の円滑な運営のために、可能な限り3/12(火)までのお申し込みにご協力をよろしくお願いいたします。

お支払方法
お⽀払いは銀⾏振込となります。お振込み情報につきましては、お申込み時にご連絡します。
収納業務は㈱ソウブン・ドットコムへ委託しております。
原則、お申込み後のキャンセルは受け付けません。下記のメールアドレスへメールでご相談ください。
※特定商取引法に基づく表記
https://www.chemistry.or.jp/others/tokusho.html


お問合せ
日本化学会 コロイドおよび界面化学部会
E-mail: jigyoukikaku_02(at-mark)colloid.csj.jp
※「(at-mark)」は半角の「@」へ変更してください。

講演概要
Soft Porous Crystal (SPC)の化学と応用
北川 進 先生(京都大学 物質-細胞統合システム拠点)

多孔性配位高分子(PCPまたはMOFと呼称される)は、貯蔵、運搬、分離などの機能を有している。中でも、ソフト多孔性結晶(SPC)と呼ばれる第3世代MOFは、物理的・化学的刺激に反応して結晶から結晶へと構造変化を示す。従来材料のゼオライトなどのI型等温線を示す剛直な材料とは対照的に、柔軟なSPCはシグモイド等温線を持ち、より高い使用可能容量とゲスト種の選択的、効率的な認識機能を持つ。本講演では、SPCの化学の歴史的背景、特徴、さらなる第4世代MOFの展望、特に設計と合成、動的構造解析、柔軟性と機能、メカニズムの理論的取り扱いと解釈、そして応用について述べる。


自己組織化の科学:ナノ構造をつくる・ナノ空間をつくる
藤田 誠 先生(東京大学 大学院工学系研究科)

配位結合を駆動力に,金属イオンと有機分子の組み合わせで一義的な構造体を自己集合構築できる。我々はM4L4正方形錯体の自己集合を起点に,最大で144成分からなるさまざまな巨大中空構造体を自己集合構築してきた。このような構造体により定義される内部空間では,孤立化した分子(低分子からタンパク質まで)が,バルク状態とはまったく異なる挙動を示す場合がある。本講演では,自己集合による空間構築と機能創出をテーマに演者らが開拓した研究領域を,その起点から最新の展開まで概観する。


精密ゲル科学と基礎に立脚したゲルの医療応用
酒井 崇匡 先生(東京大学 大学院工学系研究科)

ゲルは、三次元網目状分子が溶媒を含み膨潤したものであり、医療材料として有用な材料である。三次元網目状分子は本質的に不均一であるために、ゲルの構造・物性相関を明らかにすることは従来困難であった。それに対して、我々は、構造明確なゲル群(Tetraゲル)を用いて、ゲルの構造・物性相関を明らかにすべく研究を行ってきた。近年では、負のエネルギー弾性や、浸透圧の普遍法則、ゲル・ゲル相分離などの新しい法則を発見した。また、学理を基にした合理的な医療材料開発を行い、人工硝子体や、止血剤、癒着防止剤などを開発した。本発表では、ゲルの基礎物性について議論し、また、最新のバイオマテリアル開発について紹介する。


グラフェンで作る柔軟なナノポーラス材料
西原 洋知 先生(東北大学 材料科学高等研究所)

活性炭、カーボンブラック、黒鉛といった炭素材料は積層したグラフェンシートから成るため固くて脆いが、1枚のグラフェンは曲げに対して極めて柔軟であり、カーボンナノチューブや積層数が少ないグラフェン系材料は柔軟性に優れることが知られている。我々のグループではグラフェンのこの優れた柔軟性を利用し、細孔壁をグラフェン1枚で構成することで、スポンジのように柔軟に弾性変形するナノポーラス材料の創成に成功している。本講演では、グラフェンから成る柔軟なナノポーラス材料の合成法、特異的な構造や物性、さらに柔軟性を生かした応用について紹介する。


気水界面を利用した多孔性分子ナノシート結晶の創製
牧浦 理恵 先生(大阪公立大学 大学院工学研究科)

ナノシートはサイズと次元性に由来したバルク物質に見られない特異な性質を示すことに加え、究極に薄い機能材料として、基礎・応用の両方の観点で活発に研究が進められている。金属イオンと有機配位子の組み合わせと細孔構造により多様な機能が創出可能な多孔性金属錯体metal-organic framework (MOF) においては、錯体の骨格に加えナノ細孔の利用により分子貯蔵や分離などさらなる機能化が可能である。我々は、水面に油膜ができる現象に着目し、気水界面を利用してMOFのナノシート合成に初めて成功した。これまでに報告してきた多種多様なMOFナノシートの中から、本講演では、高い電気伝導度を有するナノシートの形成過程と導電性の相関に関して紹介する。


劇的に形を変える多孔性結晶
佐藤 弘志 先生(理化学研究所 創発物性科学研究センター)

“結晶”というと水晶やダイヤモンドなど硬い物質を思い浮べる人も多いのではないだろうか。我々は、無数の小さな穴をもった結晶「多孔性結晶」に、環境に応じて柔軟に結晶構造を変化させる仕組みを取り入れることで新たな機能を生み出すことに挑戦している。そのような取り組みの過程で予期せず、姿形を劇的に変える多孔性結晶に巡り合ってきた。本発表では、刺激に応答して大胆に形や機能を変える多孔性結晶を紹介する。


弾性不均一に起因する分子吸脱着の不均一性と非対称性
高江 恭平 先生(東京大学 生産技術研究所)

ソフトポーラスクリスタルにおけるゲスト分子の吸着および脱着は、ホストとなる結晶の構造、および弾性率(硬さ)を変形させることが知られている。このことから、吸着分子が不均一に分布するときには、結晶構造および弾性率が不均一になることが期待される。今回我々は、このような弾性不均一性が、分子の吸脱着、そして吸着分子の分布に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、分子吸着による格子の変形と、弾性率の変化を取り入れた物理モデルを考案した。本講演では、弾性不均一の帰結として、吸着過程と脱着過程で非対称性が生ずること、特徴的な吸着パターンを生ずること、および吸脱着過程の動的過程について議論する。

 

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