公益社団法人日本化学会 コロイドおよび界面化学部会

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部会長挨拶 - 尾関寿美男(平成23年-24年度部会長 / 信州大学理学部)

昨年,部会設立 35周年を記念事業によって祝うことができました。これは過去と現状への祝福であると同時に,将来への展望を描く起点でもあります。諸先輩方の努力の賜物としての部会の今後のあり方や進め方,研究の動向や推進すべき課題などの将来設計を見据えなければなりません。この度,部会長を拝命するに及んで,これらに対応した取り組みを開始する年にしなければならないと感じています。現状と展望を述べて,皆様のご参加とご協力をお願いする次第です。
コロイドおよび界面化学は点,線,面,体積を対象とし,空間の次元,サイズ,形,境界,表裏,連結性などの幾何を要素とし,物質科学でありながら物質のない側からものを見る天邪鬼的視点からの科学です。通常の化学・物理の隙間科学的な見方もありますが,われわれとしては固有の学問領域を形成していると信じています。相当の歴史や蓄積があるだけに“ナノ”ブームはコロイド科学の延長線上に見える対象で,ブレークスルーやイノベーションを強く感じるものではないらしく,新しさの見出せない学際領域を横目にマイペースを決め込んで来ています。今話題の新材料はたいてい微粒子で界面・コロイド化学の対象ですが,なかなか触手が伸びません。周辺分野がこぞってナノを名乗り,本家が追い風に乗り切れていない間にそろそろ風が止みそうです。学際からの芽吹きを眺めつつ,時代に流されずに推進してきたことを生かすためにも独自の展望を描く必要があります。
部会の事業は学問分野の発展のために欠かせないので,“討論会”,“コロイドラーニング(基礎講座)”,“技術者フォーラム”と“技術シンポジウム”,“コロイド・界面新領域創造講座”を開催して,活力を生み出すとともに,次世代育成を図っています。この他,会員増強,広報,財務などの部会運営は会員のボランティアに頼っているので,負担を分散させて長続きする貢献を提供していただかねばなりません。とはいえ,委員委嘱も事業展開も関東圏に偏りがちです。負担も受益も満遍なく会員に行き渡るようにするためにはどうするか,なかなか知恵が出ませんが,コロイドラーニングの関西での開講はサービスの均一化への一歩です。この実施には関西支部の協力を得ており,今後の事業展開に支部の充実は欠かせない要素です。地域の活性化と並んで,学術分科会活動による学問の動向や展望の把握は部会の活動やプロジェクト策定に有用かと思われます。部会が対象とすべき課題を拾い上げ,ロードマップに載せる作業も必要になりそうです。今後,支部のあり方や分科会の意味などについての議論が必要です。
学生を対象とするイベントは採算面で大きな問題となるので手薄になっていますが,日本の界面科学の下支えとしての活動が必要になりつつあると感じます。若手間の交流や世代を超えた交流の場を,希薄な人間関係や多忙な日常の中でどのように築いていくかは難しい課題です。学生に啓蒙し,周辺を巻き込み,次世代を育てる基盤として情報発信は欠かせない努力で,タイムリーなHPと出版の両輪を軸に回していくことが大切です。
 いろいろな分野で活躍しておられる多くの方々に参加していただいていますが,それらの方々が所属する学会との実質的な連携は嘗てほどはなされていないように思います。活力を得るための方策としては学術連携も考えてみる必要がありそうです。討論会時の国際シンポジウムは国内の外国人研究者や訪問研究者による英語セッションですが,参加実績を問われる場合には参加しやすい形態とは思われない。国際化,特にアジアとの連携をどのように進めるかは検討を要する課題です。
 前部会長のもと緊縮財政と事業の見直しを進めた甲斐あって部会は健全な運営に戻りつつあります。しかし,一方で人的交流,特に若手との交流が希薄になりがちです。若者に学問的魅力を伝えつつ,求心力となる学問的プロジェクトを立ち上げる積極的な活動が必要です。幸いコロイド・界面化学はかってないほど広がりをみせていると感じます。志を同じくする皆様のご協力をお願いします。

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